原価管理の基礎知識|必要な理由や管理の流れ、課題の改善法とは
こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
ビジネスシーンで企業が利益を追求する上で重要視されるものの一つに「原価」が挙げられます。そもそも企業の利益は売上から原価を差し引いて算出します。このように原価は利益と深く関わっており、より多くの利益を得るためにも原価を適切に管理しなければなりません。こうした背景から、企業は「原価管理」に取り組む必要があるのです。特に、日本経済が低迷し始めた90年代後半以降、原価管理の重要性はますます高まっているといえるでしょう。
こちらの記事では、原価管理の基礎知識をお伝えします。また、原価管理に取り組む流れや、原価管理で得られる効果、原価管理を効率化するおすすめのシステムまでご紹介するため、ぜひ参考にお読みください。
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この記事の目次
原価管理の基礎知識
そもそも原価管理とはどのような業務で、なぜビジネスシーンで重要とされているのでしょうか。初めに、原価管理の基本や、原価の具体的な種類、原価管理の基本的な施策などの情報をご紹介します。
原価管理とは?
会社が営業活動を行うと、利益が発生します。利益は、「利益=売上-原価」で算出できます。企業が自社の利益を最大化するためには、売上を上げることも大切ですが、原価の最適化が重要だといえます。
原価を最適化するために行われることが原価管理です。原価管理とは、「原価の基準を設定した上で、実際の発生額との比較を行い、差異の原因を分析して改善を進めていくこと」と定義されています。つまり、企業が十分な利益を確保できる原価を設定し、実際の原価と比較しながら目標値へと近づけていく取り組みということです。
原価管理における「原価」とは?
一般的に、原価は「材料費」「労務費」「経費」の3種類に分類できます。原価管理における原価とは、これらの全てを集計したものです。
- 材料費
商品の製造に必要な原材料や、部品などにかかる費用のことです。材料費のうち、製品一つあたりにかかる費用が明確なものは「直接材料費」と呼ばれ、費用が不明確または非常に少額なものは「間接材料費」と呼ばれます。製造業などの業界によっては、材料費の数が膨大になることも少なくありません。 - 労務費
労務費とは、製品の生産にかかる人件費のことです。具体的には、企業の製造部門における従業員の給与が労務費に該当します。労務費のうち、製品の生産に直接関わる費用は「直接労務費」と呼ばれ、生産に間接的に関わる作業や従業員の手当などの費用は「間接労務費」と呼ばれます。 - 経費
経費とは、その他の費用のことを差します。例えば、製品を生産する際に外注先へ支払う「外注費」、工場や施設の維持に関わる「減価償却費」、インフラの利用に関わる「光熱費」、現場のインターネット回線使用料をはじめとした「通信費」などが経費に該当します。
原価管理の基本的な3つの施策
原価管理には、基本となる3つのアクションがあります。それが「原価企画」「原価維持」「原価改善」です。以上の施策を実践し、原価をコントロールすることが、原価管理の基本となります。
- 原価企画
製品やサービスに投じられる原価を設定する施策です。提供する製品やサービスの価格設定に対して、求める収益を考慮した上で適正な原価を検討します。 - 原価維持
原価を調整し、目標原価に近づけるのが原価維持の施策です。製造時に事前に設定した原価をオーバーしてしまった場合、仕入先の見直しや製造工程の効率化などによって目標値の達成を目指します。 - 原価改善
目標原価よりもさらに原価を抑えるためのアクションを行います。仕入先の見直しや製造プロセスの改善を繰り返すことでコスト削減を実現し、利益率をさらに上げていきます。
原価管理と原価計算や予算管理との違い
原価管理とよく似た用語として「原価計算」や「予算管理」などが挙げられます。これらの用語と原価管理にはどんな違いがあるのかチェックしておきましょう。
原価管理と原価計算の違い
原価計算とは、製造にかかる原価や売上に対する原価を計算する方法を指します。それに対して、原価管理は計算によって導き出された原価を管理するための手法です。つまり、原価管理を適正に行うための手段の一つが原価計算だと考えるとわかりやすいでしょう。
原価計算はコスト削減や利益確保に欠かせないものの、ただ数値を算出するだけでは意味がありません。導き出した数値を分析して、改善のために活用することが重要なのです。
原価管理と予算管理の違い
原価管理と予算管理は、いずれも業務に関連するデータからコストを分析し、課題発見や経営判断に役立てる「管理会計」の一要素として位置づけられています。ただし、両者はそれぞれ異なる意味合いを持っています。
原価管理は、現状の原価を構成するさまざまな数値を分析するのが特徴です。それに対して、予算管理は次年度もしくは中期経営計画に基づく期間の中で目標予算を設定し、達成へ向けて取り組むのが特徴となっています。つまり、原価管理が現状分析を行う管理手法であるのに対して、予算管理は将来的な目標達成の方策を立てる管理手法である点が違いだといえるでしょう。
原価管理の流れ
原価管理では、PDCAサイクルを回して原価の最適化を図ることが最終目的となります。「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」のステップを繰り返すことで課題が解決され、目標原価の達成を目指せます。以下の手順で原価管理に取り組みましょう。
Step1.標準原価の設定
原価管理では、初めに「標準原価」を設定します。標準原価とは、製造前に目標値として設定する原価のことです。それに対して、製造後に実際にかかった原価のことは「実際原価」と呼びます。標準原価を設定する際は、過去の製造実績などのデータを基に計算を行い、必要な費用を見積もるのが一般的です。
Step2.原価計算の実施
製造後に実際にかかった「実際原価」を算出します。計算する際は、材料費・労務費・経費などの費目に分けて算出しましょう。これらの費目の中でも、生産に直接的に関わる「直接費」と間接的に関わる「間接費」を分けて計算するのがポイントです。また、賃料のように毎月同じ金額を支払う「固定費」、材料費のように状況に応じて金額が変わる「変動費」に分けた計算も行います。
Step3.差異分析の実施
Step1で算出した標準原価と、Step2で算出した実際原価を比較します。そして、それぞれの数値にどれくらいの差異があるのか、なぜ数値に差異が生じたのかを分析しましょう。例えば標準原価よりも実際原価のほうが高い場合は、事前に想定したよりもコストが高くなってしまっている状況です。各数値を詳細に分析することでコストが高い費目が明らかになり、原価低減へ向けた施策を検討しやすくなるため、しっかりと原因を特定することが大切です。
Step4.課題改善の実行
差異分析によって明確化した課題に対して、改善策を検討して実行します。例えばコスト削減の工夫として、より安価な材質に変更する、構造を簡素化して部品の数を減らすといった改善策が考えられます。このほかにも、組み立ての工数を減らす、不良品の発生を防ぐといった改善策も考えられるでしょう。改善策に取り組んだ後は、再度分析を実施して、施策の効果を確認します。PDCAサイクルによって計画・実行・評価・改善の流れを繰り返すことによって、課題の解決を目指していきます。
原価管理を行うことで得られる効果
企業が原価改善プロジェクトを推進すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、原価管理を行うことで得られる効果をお伝えします。
損益分岐点を明確にできる
原価管理によって損益分岐点を明確化できます。損益分岐点とは、売上高とコストが等しくなって利益を得られるようになるボーダーラインのことです。
具体例を挙げましょう。原価が50円の商品を1,000個製造すると、原価の合計額は50,000円になります。販売価格を100円に設定した場合、500個販売すれば売上高は50,000円になり、製造にかかった原価と同額になります。ここが損益分岐点です。
損益分岐点を把握することで、利益を出せる適切な価格設定ができるようになります。このように原価はビジネスの基本となるもっとも重要な要素の一つであり、適切に管理しなければなりません。
原価変動へスピーディーに対応できる
原価管理には企業の利益を守るリスクマネジメントとしての側面もあります。長期的な経営計画を立てる上でも原価管理が重要です。原価は常に一定とは限りません。特に製造業や建設業においては原材料の仕入価格がさまざまな要因で変動する可能性があります。原価が下がる場合はその分利益が上がりますが、逆に原価が上がればその分だけ企業の利益は減ってしまいます。日頃から原価管理に取り組み、大きな価格変動が起こった際の仕入先の変更やコスト削減の対策を事前に立てておけば、万が一のリスクを最小限にとどめることが可能です。
サービス原価を正確に把握できる
原価管理の施策はサービス業においても効果を発揮します。一般的にサービス業では、原価への意識が薄くなりがちです。サービスを行う人員の人件費が主な原価ですが、どれくらいの工数がかかっているのかをきちんと管理できている企業は少ないのではないでしょうか。業種を問わずコストマネジメントは利益の最大化のために重要です。
無駄なコストを把握できる
原価管理に取り組むと自社のビジネスにおける無駄なコストを可視化できます。原価の構成要素を詳細に把握することで、現状の原価のうち必須の費用と削減可能な費用を定量的な視点から判断できるようになるでしょう。
原価管理における企業の課題
多くの企業では、原価管理業務において以下のような課題を抱えています。
管理に手間がかかる
原価に関するデータを紙やExcelで管理している企業では、管理業務に多くの手間がかかるのが難点です。紙の書類やExcelファイルはリアルタイムで情報を更新できず、複数人での編集にも対応できません。現状の把握のために必要なデータを収集する工数や、複雑な計算方法で数値を出す工数がかさみ、課題の分析に時間がかかってしまいます。担当者の業務負担が増加すると、ヒューマンエラーのリスクも高くなるでしょう。
管理が属人化しやすい
自社の原価管理を特定の担当者のみが理解している状況では、属人化が懸念されます。原価管理は業務内容や計算方法が複雑で難しいことから、一般的に属人化しやすい傾向にあります。属人化したままでは、担当者の異動や転勤、退職によって業務がブラックボックス化するリスクがあります。
原価管理はシステムの導入で効率化できる
社内の原価管理業務は、システム導入によって効率化すると良いでしょう。ここでは、原価管理システムの特徴や、システムの導入効果についてお伝えします。
原価管理システムとは?
原価管理システムとは、原価管理に関する便利な機能を搭載したツールです。具体的には、原価計算・データ集計・予実管理・損益分岐予測をはじめとした機能が搭載されています。これらの機能を活用すると、原価管理業務における複雑な計算や処理を自動化でき、かつ分析したデータを利益管理やリスク管理に役立てられます。
例えば、システムの原価計算機能を使えば、製品ごとの製造原価をそれぞれ出力することが可能です。データ集計の機能は、部門間の原価データの平均値を比較したり、社内のデータを分析して現状の問題点を洗い出したりと幅広く役立てられます。さらには、損益分岐点の予測や利益向上のための目標値の試算ができるのもポイントです。
原価管理システム導入の効果
原価管理システムの導入によって、原価管理の正確性向上やリアルタイムでの情報共有といった効果が得られます。データの一元管理によって社内の連携を強化できるのが大きなメリットです。また、業務の自動化によって効率的な原価管理を実現できるのはもちろん、ヒューマンエラーの低減も期待できます。さらには、定量的な指標に基づくデータを迅速かつ正確に出力できるため、経営判断のスピードや質の向上につながり、企業の利益へ直接的に貢献できるでしょう。
ほかにも、原価管理システムと外部システムの連携による効果も注目されています。原価管理システムをERP(基幹業務システム)などの各種ツールと連携すると、データ入力や集計に関わる工数を大幅に削減できる可能性があります。システム導入による人件費のコスト削減効果も見込めるため、連携性の高いシステムを導入してはいかがでしょうか。
企業の利益と関わる重要な原価管理にはシステム活用がおすすめ!
ここまで原価管理の基礎知識、原価管理に取り組む流れ、原価管理で得られる効果、原価管理を効率化するおすすめのシステムなどをお伝えしました。
原価管理業務は企業が利益を追求する上で重要な意味を持っています。利益を確保するだけでなく、リスクマネジメントとしての側面も持ち合わせているのです。そんな原価管理業務では、正確な原価の把握や適正な標準原価の設定が欠かせません。製造業だけでなく、あらゆる業種で原価管理の施策が有効です。社内のコスト意識を高め、より多くの利益を得るために、ぜひ原価管理の施策に取り組みましょう。その際は、今後のビジネスの成長を見据えてぜひ専用システムでの効率的な管理をご検討ください。
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記事執筆者紹介
- 株式会社ラクス「楽楽販売」コラム編集部
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