今さら聞けない「売上計上」とは?
意味と計上タイミングを解説
こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
一般的に、企業の運営目的は売上をあげて利益を得ることです。そのため、売上の計上は企業にとって重要な業務です。ですが、業種によっては計上タイミングの判断が難しいケースもあります。売上の計上タイミングは企業ごとに異なっている場合もあり、混乱してしまいがちです。そこで、今回は売上計上時期と計上にあたっての注意点を解説していきます。
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この記事の目次
計上とは
計上とは「全体の数値に組み入れること」を指し、会計上の概念では「帳簿に記入して決算書へ反映させること」と広く認識されています。
たとえば企業の経費や利益を計算する際に必要なのは、かかった経費や売上などの細かな数字です。この数字を企業予算全体の計算に含むことではじめて、正確な企業の利益や損失額などを知ることができます。
費用を簿記や会計システムに記録する際に「計上する」という言葉が頻繁に使用されますが、それは「日々の細かなお金の動きを決算書に組み入れること」という意味だと考えるとわかりやすいでしょう。
計上とは実現主義である
現在の日本では、経費計上のタイミングや考え方は大きく「発生主義」「現金主義」「実現主義」の3つにわかれます。
「製品を受注した時点で売上に計上する」という発生主義を採用している企業もあれば、「納金されてはじめて経費に計上する」という現金主義の企業もあります。今までは企業の考え方や方向性によってさまざまな経費計上スタイルが認められていましたが、2015年3月から経費計上などに対する新たなルールの整備がはじまりました。
このルールは、今まで経費計上のタイミングとされていた「発生主義」「現金主義」「実現主義」の3つを「実現主義」に統一するというものです。
基本的には「製品やサービスの所有権が移転したタイミング」で売上を計上するようになることから、これまで発生主義や現金主義で経費計上していた企業にとっては大幅な会計手続きの変更が必要になります。
新しい会計基準は2021年4月から適用開始が予定されているため、今からしっかりと準備を進めていきましょう。
新収益認識基準について
上記で触れた新しい会計基準とは「収益認識に関する会計基準」のことで「新収益認識基準」という名称で浸透しています。ここで改めて解説していきましょう。
新収益認識基準の誕生には、経済のグローバル化の流れが関係しています。
これまで日本では、経費計上を出荷や検収のタイミングなど企業の解釈に委ねていました。つまり、日本の会計基準は企業ごとにバラバラだったのです。
そんな日本の会計基準を国際的な会計基準に寄せて「履行義務が充足されたタイミング」に統一したのが新収益認識基準です。
商品やサービスを顧客と契約した場合を例にあげると、商品の引き渡しやサービスが実際に行われたタイミングが「履行義務が充足された」と解釈されます。
保守・点検サービスやサブスクリプションなど、これまで一括計上していた種目などは段階的に計上する義務が生じるため、経理業務にも大きな影響があると考えられます。
適用対象となる企業
基本的に新基準の強制適用対象となるのは、監査対象法人である大企業や上場企業のみです。監査対象法人以外の中小企業については任意適用となるので、従来のままの企業会計原則を継続しても問題ありません。
親会社が対象企業に該当する場合でも、連結子会社は任意適用に該当することはよくあります。ただ、連結決算では親子会社間の会計基準の統一が求められているという側面もあるので、親会社と同様に連結子会社も新基準に則らなければならないというのが原則です。
もしくは、新基準に対応するためには経理業務の再整理の手間がかかってしまうため、新基準適用外の連結子会社は従来通りの個別財務諸表に修正仕訳を入れて、新基準に適用するという方法も認められています。
適用対象とならない取引
新収益認識基準の対象は、「顧客との契約から生ずる収益に関する会計管理及び開示について適用」とあります。次の取引については不適用とされています。
- 「金融商品会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
- 「リース会計基準」の範囲に含まれるリース取引
- 保険法における定義を満たす保険契約
- 同業他社との交換取引
- 金融商品の組成又は取得において受け取る手数料
- 「不動産流動化実務指針」の対象となる不動産の譲渡
詳しくは、国税庁の「収益認識に関する会計基準」への対応についての下記リンクを参照してください。
引用:収益認識に関する会計基準」への対応について~法人税関係
関連記事はこちら2021年4月開始の新収益認識基準、おさえておきたいポイントを紹介
売上計上とは
ビジネスの世界では当たり前に使われている「売上計上」という言葉ですが、事業をはじめたばかりの方の場合、意味や基準が曖昧になっていることも多いと思います。
ここでは、「売上計上」という言葉の意味・基準についてご紹介していきます。
計上基準や仕入れ計上について詳しく知りたい場合は、こちらの記事「仕入計上って何?3つの計上基準と計上する際の注意点とは」もぜひ参考にしてみてください。
売上計上の基準とは
売上計上のもっともシンプルなパターンは、小売店などで直接顧客に商品を販売して代金を回収するケースです。このケースの場合は販売した日が売上の計上日です。
それに対して、商品の出荷から数日後に顧客に商品が届く場合、注文の確定日、出荷日、顧客が受け取った日など、売上を計上するタイミングをどこにするべきなのか迷ってしまいがちです。
基本的に売上の計上は顧客に商品の引き渡しがされたときに行うルールとなっています。そのため、上記のケースでは顧客が商品を受け取った日が売上の計上日となるのです。これが売上計上基準です。
売上計上基準の種類
前述の通り、売上計上の基準には基本的なルールはあるものの、新収益認識基準の任意適用が認められている場合は企業や組織の事情などから基準の選択も可能です。ここでは売上計上基準の種類をご紹介していきます。
出荷基準
商品の出荷日に売上計上を行うのが、出荷基準です。ECなどの場合、出荷から顧客に届くまでの期間に差が生じることもあります。
出荷基準であれば顧客側の都合に関係なく売上計上が可能なため、物販業などで採用されています。
検収基準
顧客が検収を完了した日に売上計上を行うのが、検収基準です。注文とは仕様が異なり、修正や交換などが発生するケースの多い製造業などで採用されています。
検収の完了によって確実に取引が成立した上で売上計上を行うため、後に修正や変更の必要性があまりない点がメリットです。
検針基準
検針などで、販売した数量を確認した日で売上計上を行うのが検針基準です。電気やガス、水道などで採用されています。
販売量が常に変動する業種では、もっとも有効な基準です。ただし顧客数が多く、同日に一度に検針ができない場合は、基準日が顧客によって統一されない状態となってしまうケースがあります。
使用収益開始基準
商品やサービスなどの使用開始日に売上を計上するのが、使用収益開始基準です。ウェブサービスなどで広く採用されています。
契約の時点ではなく、実際にサービスの使用が可能になった段階での売上計上となるため、検収基準に近い考え方といえるでしょう。
役務提供完了基準
サービスの提供完了日に売上を計上するのが、役務提供完了基準です。継続サービスの場合、一定期間で区切って計上する形となります。設計業務などで採用されています。
工事進行基準
工事進行基準は成果の確実性が認められる場合にのみ採用される計上基準で、その工事の進捗状況に応じて収益が計上されます。建築、ソフトウェア開発などの業種で用いられることが多いです。
工事が長期間に及ぶ場合や請負の対価が高額になる場合など、比較的大規模な工事において採用される計上基準となっています。工事の完成以前に利益が計上されることになりますが、納税額や予算、事業計画にも影響を与える可能性があるという点には注意が必要です。
工事完成基準
前述の工事進行基準とあわせて建設業などで多く採用されているのが、工事が完成して引き渡しを行った日に売上計上を行う工事完成基準です。工事進行基準はすべての工程が完了する前でもその進捗に応じて計上を行うことができるのに対し、この工事完成基準は工事の途中段階での計上ができないという違いがあります。
売上計上にあたっての注意点
売上計上は、企業で利益を得るために重要となるポイントですが、気を付けなければならない注意点もあります。ここでは売上計上の際の注意点を解説していきますので、参考にしてみてください。
売掛金の取り扱いに注意
掛け売りを行うことで、取引先や売上を増やせるケースがあります。ただし、売上を計上しても取引先の倒産などで本来入るはずだったお金が入らず、経営ダメージを受けるケースもあります。常に「支払いが期日通りに行われているかどうか」を確認しておきましょう。
売上計上基準選びは慎重に
前述の通り、売上計上基準は合理的な理由があれば企業の都合などに応じて選択が可能です。しかし、一度基準を選ぶと特別な理由がない限り変更ができなくなります。
具体的には販売方法や契約内容、取引条件の変更や取引量の著しい変化などが認められなければ売上計上基準を選びなおすことはできないため、慎重に選択を行いましょう。
仮に変更が必要となった場合、正当な理由があることを立証する必要があるため、証拠となる資料は必ず保管しておきましょう。
関連記事はこちら 売上計上基準とは?種類・決め方や業種による違いまで解説
中小企業の売上計上時期とは
上記の通り、売上計上基準は慎重に選ぶ必要があります。そこでここでは、中小企業の売上計上時期の考え方をご紹介していきます。
発生主義
代金の受け取りなどに関係なく取引の発生と同時に売上計上を行う考え方が、発生主義です。常に取引上の正確な損益計算が可能です。
処理も難しくないため、とくに中小企業や個人事業などでは経理業務の手間を削減できるという点もメリットです。
現金主義
商品やサービスの提供時期とは関係なく、代金が入金された時点で売上計上を行う考え方が現金主義です。
小売店など、売上のほとんどが現金による取引の場合は集計がしやすい点がメリットです。ただし、商品の引き渡しと売上計上が大きくずれてしまうという点には注意が必要です。
実現主義
実現主義は代金の入金に関わらず、商品・サービスを提供した時点で売上計上を行う考え方です。商品の出荷・引き渡し状況と売上の計上が一致するため、損益をリアルタイムで確認できる点がメリットです。
計上時期と税務調査で気を付ける3つのポイント
売上の計上時期は税制面にも大きく影響します。ここでは、売上計上時期と税務調査にあたり気を付けるべきポイントを3つご紹介します。
1.仕入計上の時期
売上計上基準は厳しく定められていますが、仕入れにおいてはそれほど厳格ではありません。ですが、一般的には売上と同様に出荷基準や納品基準などの中から選択して採用します。
この基準は自由に選択ができますが、一度選んだ基準は毎期継続する必要があるため注意してください。
2.売れ残り商品の取り扱い
仕入れを行ったものの、期末まで売れ残ってしまう、といったケースも発生します。こういった場合、仕入れが売上に結びついていないため、仕入れとして決算をすると損益がずれてしまうこととなります。売れ残り商品については棚卸資産として次の期へと繰り越す必要があるのです。
3.期ずれに注意
税務調査では売上の計上日に関してとくに厳しくチェックされるため、計上した時期が本当に正しいのかを確認しておくことが重要です。
たとえ意図的ではなかったとしても、期ずれが確認された場合は追徴課税の対象となるため注意しましょう。
売上計上業務を効率化する方法
ここまでご紹介したように、売上計上は案件ごとのさまざまな条件を踏まえて行わなければならないため、会計業務の負荷が大きくミスの温床にもなりかねません。効率的に売上計上を行うには、システムの導入をおすすめします。
Excel(エクセル)で売上管理する
すぐにでもはじめられるシステム化の方法は、多くのPCに初期搭載しているエクセルを使うことです。「得意先別」「商品別」などと社内でフォーマットを揃えておけば、のちにエクセル書類をまとめて売上計上業務を行う際にもスムーズです。
ただし、エクセル書類はセルに埋め込んだ関数がちょっとした操作で崩れてしまうことがあり、エラーを起こさずデータを更新するよう慎重に作業する必要があります。
関連記事はこちら エクセルで売上管理をする方法|関数の使い方や無料テンプレを紹介
会計ソフトで売上管理する
会計ソフトなら、まさに計上のためのソフトなので導入するだけで売上計上以外の会計業務もまとめて効率化できます。使い方さえ覚えてしまえばエクセルのようにデータが崩れるといったことも起きにくいので、人的ミスも軽減できます。
販売管理システムで売上管理する
商品の販売に関する業務を統括して管理する販売管理システムなら、売上計上業務を含む多くのルーチンワークの大幅な業務効率化を実現できます。複雑な売上計上ルールも、事前に登録しておけば自動集計が可能になるので人的ミスを事前に防げるようになります。
その他にも見積もりから受注、納品、請求、売上といった部門をまたいだ業務をデータ共有・自動転記できることもメリットです。
「楽楽販売」のようなクラウドタイプの販売管理システムなら、インターネット環境に接続しているデバイスからなら場所を問わずアクセスできるので、タイムリーな情報共有はもちろん、近年加速しているリモートワークにも対応可能です。
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まとめ
今回は、売上計上の基準や計上にあたっての注意点について紹介してきました。売上計上基準の種類はさまざまですが、一度決定してしまうと基本的に変更することは難しいです。自社の業種や状況などを踏まえた上で慎重に選びましょう。今回ご紹介した税務調査対策も踏まえた上で、適切な売上計上を行ってください。
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- 株式会社ラクス「楽楽販売」コラム編集部
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