損益分岐点の計算方法は?経営改善につながるヒントをご紹介
こんにちは!「楽楽販売」コラム担当です。
「損益分岐点」は企業の経営状態がわかる指標のひとつです。定期的にこの数値を把握しておくと、原価と利益についての意識が高まります。この記事では、損益分岐点を把握するための計算方法や、損益分岐点の視点から経営改善を図る方法などをご紹介します。
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この記事の目次
損益分岐点は赤字・黒字の転換点
「損益分岐点」とは、利益がプラスでもマイナスでもないゼロの地点を指します。商品やサービスの売上と、事業にかかった原材料費や人件費などの経費がイコールになっている状態のことです。
売上が損益分岐点を上回ると黒字が出ている状態で、損益分岐点を下回れば赤字経営となってしまいます。つまり売上が損益分岐点を維持するだけでは売り上げの余剰はないため、商品・サービスの改善や新規事業などのためのコストがかけられません。
組織がさらに成長するためには、売上と損益分岐点の差額を意識して業務に取り組む必要があります。
損益分岐点の計算に必要な用語
損益分岐点を計算するためには、いくつかの数値を用意する必要があります。
事業にかかる費用を分類した「固定費」と「変動費」、そして「限界利益」の3つです。それぞれの意味について解説します。
固定費
固定費とは売上の増減に関係なく常に発生する経費のことで、「能力費」「製作費」「組織費」の3つに細分化されます。
能力費には事務所の家賃や所有する不動産の固定資産税、福利厚生費、借入金の利子などが、製作費には広告宣伝費や試験運用費などが該当します。
組織費は人件費のことを指しますが、派遣社員やアルバイトへの報酬は変動費にするケースがあるなど、企業ごとに設定が異なるのが特徴です。
変動費
変動費とは、生産量や売上高に合わせて増減する費用のことです。
商品を製造するための原材料費や仕入れ原価、加工や運送の外注費、販売に伴う販売手数料などが該当します。前述したように人件費の中でも派遣社員やアルバイトへの報酬等は、就業時間が一律ではないため、この変動費に含まれる場合もあります。
限界利益
限界利益とは商品をひとつ売った時に回収できる固定費のことで、売上高から変動費を引くことで求められます。損益分岐点を計算する前に、この限界利益を算出する必要があります。
変動費が売上高を上回っていると限界利益がマイナスの数値になります。限界利益がマイナスということは売れれば売れるほど赤字になっている状態であり、一般的には事業撤退の判断材料となります。
限界利益を算出できると、売上高のうち限界利益の比率がどれくらいの割合を示しているかがわかる限界利益率を求められるようになります。
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損益分岐点を計算するには
ここからは、損益分岐点売上高の計算方法を解説していきます。計算方法は2種類あります。
それぞれの数値が以下の通りだった場合を想定して計算してみましょう。
事業の売上高 | 変動費 | 固定費 |
---|---|---|
1,000万円 | 400万円 | 500万円 |
計算式①
ひとつ目は、固定費と限界利益率を用いて損益分岐点を算出する方法です。
上記で解説したように、限界利益率は限界利益÷ 売上高で計算できるので、
「(売上高1,000万円-変動費400万円)÷売上高1,000万円」という計算式から、限界利益率は0.6(60%)であるとわかります。
損益分岐点を求める計算式に当てはめると「固定費500万円÷限界利益率0.6=833.3…万円」となるので、833万円が損益分岐点売上高ということになります。
計算式②
もう一方の計算式は、固定費と変動費率を用いて損益分岐点を算出する方法です。
変動費率とは売上に対する変動費の割合のことです。計算式は「変動費÷売上高」となります。
先程と同様に、売上高1,000万円、変動費400万円、固定費500万円の事業の例で計算式に当てはめると、「変動費400万円÷売上高1,000万円」で、変動費率は0.4(40%)となります。
損益分岐点を求める計算式は「固定費500万円÷(1-変動費率0.4)=833.3…万円」となるので、およそ833万円が損益分岐点売上高ということになり、計算式①と同様の数値が算出できます。
損益分岐点比率とは
損益分岐点比率とは、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合のことです。
計算式は以下の通りです。先ほどの数値を例に挙げて実際に計算をしてみましょう。
事業の売上高 | 変動費 | 固定費 | 損益分岐点売上高 |
---|---|---|---|
1,000万円 | 400万円 | 500万円 | 833万円 |
上記を例とすると、「損益分岐点売上高833万円÷売上高1,000万円=0.833」で、およそ83%が損益分岐点比率となります。この計算式から分かるように、「損益分岐点売上高」と「売上高」がイコールの状態だと損益分岐点比率が100%となり、事業の売上は赤字でも黒字でもない損益分岐点にあることを意味します。つまりは損益分岐点比率のパーセントが高いほど赤字経営であり、低いほど売上が落ちても赤字になりにくい経営状況といえる訳です。
一般的には80%台が普通企業とされているので、今回の例の場合は普通企業に分類されます。
安全余裕率とは
安全余裕率とは、売上高と損益分岐点の差を表す指標です。「安全余裕」という言葉通り、高ければ高いほど経営状況が黒字で余裕があることがわかります。下記の計算式で算出できます。
先程までの数値を当てはめると、「(売上高1,000万円-損益分岐点売上高833万円)÷売上高1,000万円×100=16.7」となり、安全余裕率は16.7%であることがわかります。これは売上が損益分岐点に対して16.7%上回っている状況を示しています。
売上が16.7%以上落ちてパーセントがマイナスになると赤字経営へと転落してしまいます。このパーセントを覚えておけば、日頃から売上の増減に対する意識も変わるでしょう。
自社の安全余裕率は、営業に関わるなら経営者でなくともぜひ覚えておきたい数値です。
損益分岐点分析によって経営改善を図るには
損益分岐点を分析することで、どのようなポイントを改善すれば経営状況の回復が期待できるかがわかります。「固定費の見直し」「変動費の抑制」「売上単価を上げる」の3つについて見ていきましょう。
固定費の見直し
家計の節約においても、月々の保険料を見直したり家賃を抑えたりすることが効果的であるように、固定費の見直しにおいても月々の支出を確実に抑えることが第一歩です。
事業の経営状況を改善したいと考えている場合には、まずは固定費の見直しから取り組みましょう。
固定費は、売上の増減に関わらず必要となる一定の経費です。売上が上がれば固定費の負担は軽くなりますが、売上がなくても変わらず支出が必要なので、経営に重くのしかかります。
事務所や倉庫の地代家賃や各種保険料、人件費の見直しなど、固定費の削減はハードルが高いものが多いです。だからこそ、一度取り組むと毎月の支出が下がり、損益分岐点も低くなります。
例えば、在庫管理システムを導入して在庫量を最適化し、それに見合った倉庫に移転して地代家賃を下げる方法や、バックオフィスの効率化を図る管理システムなどを導入して人材配置を最適化するなどが挙げられます。このようにシステムを導入することでも固定費の削減が期待できるケースがあるのです。
ただし、固定費を下げることが目的になってしまわないよう注意する必要があります。広告費を極端に下げると消費者の目に届かず結果として売上につながりませんし、人件費を抑えるために採用を控えると、将来を担う人材が育ちません。
固定費の見直しは費用を抑えれば良いというわけではないため、慎重に見極めて行いましょう。
変動費の抑制
変動費の抑制も損益分岐点を下げる方法の1つです。例えば、材料費の値下げについて取引先と交渉したり、時には仕入れ先を変更したりなどして原価は抑えることが可能です。
さらに、配送業者と配送ルートの最適化を図れば、運送費の見直しを図ることもできるでしょう。
しかし、これらのコストは商品やサービスの品質を維持するために欠かせない経費であるため、むやみに削減してしまうと品質低下に陥ります。加えて、仕入れ先や運送会社などの取引先を買い叩くと、信頼関係にも傷がついてしまうでしょう。
モノが溢れる現代社会では、消費者は商品そのものだけでなく企業のコンプライアンスにまで目を光らせています。
利益のみ優先して社会からの信頼を損ねてしまっては本末転倒になるため、変動費を抑える場合には、企業や商品の価値を損なわない程度にすることが大切です。
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売上単価を上げる
固定費や変動費はそのままに、商品の売上単価を上げてこれまで同様の数を販売できれば、おのずと損益分岐点は下がり、簡単に黒字経営を実現することができます。しかし、現代の日本において価格の安さは欠かせない消費者ニーズのひとつです。
昨今、原材料の高騰によりさまざまなモノが値上がりしています。この場合は企業の利益目的により価格が上がるわけではないため消費者も受け入れざるを得ませんが、企業が利益を求めるためだけに値上げする場合は、消費者に理解されず顧客離れを引き起こす可能性があるので注意しましょう。
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まとめ
損益分岐点は、経営状況がプラスマイナスゼロ(=経常利益がゼロ)という状態を示しています。スタートアップ時から黒字経営にすることは難しいですが、経営を継続するには、少なくとも損益分岐点以上の売上を目指すことが第一歩となります。
損益分岐点を下げるには固定費の見直しや変動費の抑制、売上単価を上げるなどの手法が考えられます。固定費、変動費、売上単価のいずれも最適化できているかどうかは、継続的に経営指標を計測し、分析することが大切です。
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業務効率化は経費削減や生産性向上に直結しているので、固定費・変動費の削減にもつながり、損益分岐点を下げる効果も期待できます。無料トライアルも実施しているので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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